象と戦うために飼育されたインドの馬

象と戦うために飼育されたインドの馬

動乱のインドの歴史に関わってきた、強健な血統を持つ戦闘馬、マルワリ馬。

marwari horse ridePrincess Trails guide, Amar Singh, and Marwari horse, Ponam, in traditional dress.

くるんとした軍馬マルワリ馬は、かつてはインドの歴史を方向づける切り札であった。

過酷な砂漠熱に耐えられるよう飼育されると同時に、剣を自在に操る象に乗った敵と戦うよう調教されていた。戦場におけるこの軍馬たちの活躍は、自己の血族が最も崇高であると信じたラージプート族の盛衰に密接に関わってきた。

現在はラージャスタンと呼ばれるインドの「王子」民族は、勇敢で誠実、誇り高いことで名高く、また彼らの愛馬もそれに等しい。

マルワリ馬の血統には、さまざまな見解がある。

古代の品種だという主張や、ラージプート族が、強者アフガンの侵略者による北インド征服でラージャスタンの荒れ果てた土地に追いやられた後の 12 世紀に、マルワリ馬として知られるようになった育種を始めたという説もある。

数世紀にわたり次々と押し寄せる侵略に対し権力を維持するために、ラージプート族はアラブ、中央アジア、そして自前の家畜を交配して、利口で勇敢、強健な品種を生み出した。

ラージプート族は、戦闘中敵に近づくために彼らの弱点を巧妙に活用した。愛馬にニセモノの鼻を成形し、成長した動物が本能的に攻撃しない子象に見せかけたのである。

Marwari horse as elephantModel at Udaipur's City Palace showing a Rajput and his Marwari horse in false elephant trunk.

象の鼻を持った馬

そしてマルワリ馬は前足を上げ、象の頭に前足をかけ、自分の主人が敵の象使いを槍で攻撃できるよう助けたのだ。

加えて、突然変異とみられる馬の独特な耳は、ラージプートの権力を維持するもうひとつの鍵でもあった。他に例をみない 180 度回転する耳には生命維持に欠かせない鋭い聴力が備わっている。隠れ場所がない砂丘で素早く逃げるときには欠かせない能力だ。 

ラージプート族の長期にわたる君臨を賞賛する多くの歴史絵画には、マルワリ馬と象の戦闘が多く描かれている。

marwariHistoric painting depicting the famous Battle of Haldighati in 1576 where Rajput Maharana Pratap, on his horse Chetak, attacked the Mughal leader.

Haldighati の戦い

最も有名な戦いは1576 年の Haldighati の戦いだろう。その模様は、ラージャスターン州ウダイプルにあるシティ・パレスに展示されている絵画で描写されている。

伝説の馬チェタックは、彼の主人、ムガール帝アクバルに抵抗した最後のラージプート、マハラナ・プラタプの命を救ったと伝えられている。

チェタックは「ニセ鼻」を付け、先頭の敵象に前足で襲い掛かかり、プラタプがアクバル将軍に槍を投げるのを援護している。 しかし、将軍が槍をかわしたため像使いが代わりに殺された。半狂乱となった象は、戦闘用に取り付けられた鼻先の剣でチェタックの足を 1 本切り落とした。

息も絶え絶えになった馬は、それでもプラタプをなんとか戦場から連れ出そうとする。プラタプは、弟のシャクティ・シンの馬に乗り脱出することができた。

結局ラージプートは敗北に終わったものの、この戦いはラージプート族と馬達の忠誠と勇敢のシンボルとして今も歴史家に評価されているのである。

そしてこれがまさしく、ラージプート人は自分の馬から決して離れない理由だ。ラージプート族の存続に関わったマルワリ馬の血統は重要なのである。

He was the great great grandfather of Princess Trails' proprietor, Virendra Singh Shaktawat. Renowned Rajput rider, hunter and horse breeder Rawat Nahar Singhji Boheda, circa 1900.

英国植民地主義による絶滅の危機

しかし、イギリスのインド侵出で事態は一変する。マルワリ馬は絶滅の危機に瀕した。入植者はこの馬を嫌い、代わりにオーストラリア産の品種を持ち込んだのである。

誰もが実権の支配下にある馬を欲しがり、マルワリは廃れていった。

1947 年に独立宣言が出されイギリスがインドを去ったころ、事態はさらに悪化する。マルワリ馬は、ラージプートの権力が敷かれた封建制度の象徴だとみられたしまったのだ。

よって、多くのマルワリが放棄、銃殺、去勢された。次の世代のラージプートは馬を持たず、この民族の名高い馬術は、マルワリ品種とともに消滅寸前となってしまった。

だが、観光が発展したおかげでマルワリ馬への関心が再び高まった。

90 年代のラージャスターンの末裔たちがこの特殊な馬の飼育を復活、今度はトレッキングの乗馬用になった。

ウダイプルのプリンセス・トレイルの所有者、ヴィレンドラ・シンさんは、祖父、曽祖父、高祖父の写真を誇らしげに見せてくれた。ラージプートの馬乗りの祖先は皆、偉大なるプラタプの同胞、シンであると言う。

ヴィレンドラさんの妻でインド史の学士号を持つウテさんは、マルワリ馬について研究を行っている。 「マルワリ馬は間違いなく、ラージャスターンの歴史に強い影響を与えていますよ。 ラージプート族の馬と剣は、命と引き換えられるほど大切で、妻や家族と同じくらい深い愛情を持っています」

マルワリ馬の乗馬トレッキングの人気が功を奏し、この馬の飼育は、今再び、歴史的なこの土地の人々の繁栄の鍵を握っている。

marwari rajasthanアクセス

プリンセス・トレイルへのマルワリ馬トレッキングの詳細は、ウェブサイト www.princesstrails.com から。

ウダイプルの宿泊情報は Hotel Panorama までEメール(krishna2311@rediffmail.com)で問い合わせのこと。